婚姻費用分担金(支払わなくてよい場合や計算式)
婚姻費用の性質
婚姻費用とは、以下の規定からくる婚姻している夫婦間の生活扶助から、収入が多い方が少ない方へ支援するというものです。
第752条【同居、協力及び扶助の義務】 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。 |
よって、男性から女性だけでなく、女性から男性への支払いと言うこともあり得ます。
裁判例上、婚姻費用分担金請求といえども限界はあります。
とは言っても、これは配偶者が最低限生きていく生活費ですから、これを奪えるのは、相当に限定はされています。
婚姻費用の支払いが不要な時
裁判例
平成16年1月14日大阪高裁決定(家裁月報56巻6月155頁)によれば、「「別居の原因の全部または大部分が婚姻費用の請求者側にある場合には、一方で、請求者自身が夫婦の同居協力を失わせておきながら、他方で、相手配偶者に扶助(婚姻費用の分担)のみを求めることは、信義誠実の原則に反し」許されない。」とされています。
平成20年7月31日東京家裁決定(家裁月報61巻2号257頁)によれば、「「別居の原因は主として申立人である妻の不貞行為にある」としたうえで、「同居の未成年の子の実質的監護費用」だけ「を婚姻費用の分担として請求しうる」」(婚姻費用のうち,子の監護分の費用は払われるが,妻の生活費分は払われないという趣旨)とされています。
検討
判決文にも書かれていますが,婚姻費用分担金というのは,夫婦で助け合うという考えが根底にあるので,これを自ら破壊した場合にまで保護されないという考えです。
もっとも、夫婦の離婚の場合など、特に裁判所での手続きまで言っている場合は、相手が悪い、相手が夫婦関係を壊したと言いあうのは普通です。
よって、その中で婚姻費用を払わなくてよいようなものは、一方の夫婦関係破壊の理由が明白で、決定的なものである必要があるでしょう。
実際には、そう認められるものではありません。
養育費の計算
2019年12月23日に婚姻費用・養育費の算定方式や算定表が改定されました。
人によっては養育費算定表をご覧になった方もいるかもしれませんが、あの表には前提となる計算式があります。
正確な1円単位の金額を出す場合
収入が多い方の人が子を監護して、相手に婚姻費用を払う場合
離婚と再婚を繰り返し、前妻と後妻の子の監護費用を検討しなければならない場合
などは計算式からの計算が必要です。
計算時期
婚姻費用の始期については、一応の理論上は請求したときとなるのでしょうが、実際には婚姻費用分担調停を家庭裁判所に申立てた時点とされることが多いです。
請求時になった事例もないではないですが。
計算式
義務者と権利者の基礎収入
収入額に一定の割合をかけて、基礎収入を出します。なお、この際の収入は額面の金額です。
源泉徴収票の総支給額(給与所得者)
0~75万円・・・・・・・・54%
75万~100万円・・・・・50%
100~125万円・・・・・46%
125~175万円・・・・・44%
175~275万円・・・・・43%
275~525万円・・・・・42%
525~725万円・・・・・41%
725~1325万円・・・・40%
1325~1475万円・・・39%
1475~2000万円・・・38%
夫婦の分を合算して、その家庭で振り分けられる金額を出します。
生活費指数
親:100
子(0歳~14歳):62
子(15歳以上):85
とされております。これは、大人の生活にかかる費用を100と考えた場合に、子にはどれくらいの費用が掛かるかと言うことで計算されています。
旧算定表とは、この数字が変わっております。
権利者割当
権利者が家庭の基礎収入から、どれくらいの割り当てを受けるかを計算します。
割当金=(権利者と義務者の基礎収入合計)×((権利者の生活費指数+権利者と一緒にいる子どもの生活費指数)/(権利者と義務者の生活費指数+子どもの全員の生活費指数)) |
婚姻費用(年額)を算出
権利者側に振り分けられる金額から権利者の基礎収入を差し引くと権利者が受領する金額が導かれます
前記の割当金金額 ー 権利者の基礎収入
結論
以上のとおり、婚姻費用は簡易に表や計算式から算出することが出来ます。
ただし、これはあくまで簡易で算出した目安値であって、個別の状況に応じて増減はありえます。
具体的によく変動が生じるのは、持病や障害がある場合、私立の学校の学費(これは子についてですが)などがあります。