破産した時の取締役の地位

法律(会社)

破産したら取締役になれないか

はじめに

時折ある質問

 

破産したら、取締役になれないでしょうか。

破産したら、取締役を辞めなければなりませんか。

 

 

当事務所の対応が多い中小企業の代表者の方などでは、たいていの方は、自分の個人破産時は、自分の経営している会社も破産しますから、そういう質問がある場合は限られてはいます。

しかし、中には、会社では雇われ取締役であり、個人が破産しても継続して業務をしたいと考えられていたり、会社と自身は破産するが今後の仕事先として、友人の会社に役員として誘われているということもあります。

そのような場合に、しばしば上記のような質問を受けます。

結論

結論から書きますと、取締役は一旦は辞めなければなりませんが、再度の選任とか他の会社での選任は禁止されていません。

破産したら取締役を辞めないといけないか

会社と取締役の契約関係

会社法 第330条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

とされています。

会社と取締役の関係は、委任関係です。従業員のように雇用契約では無いのでご注意ください。

(尚、従業員兼役員の場合は、委任契約と雇用契約が併存していることもあります)

ですので、契約の終了因は、民法の委任契約に従うことになります。

 

民法の委任の終了因

民法の委任契約は、以下の通りの事由で終了します。

今回、問題になるのは、2号ですね。

「破産手続きの開始決定」を受けた時点で委任契約は終了します。

よって、取締役の地位も無くなります。

民法653条

委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。

 

 

いったん辞任後の取締役の就任が可能か

条文検討

上記のように、一旦は辞任が必要です。

では再度任免されたり、他の会社の役員にはなれないのか。

これは、以下の通り、取締役の欠格事由を確認すればわかります。

———–細かいのでざっと読んでください—————

第331条 次に掲げる者は、取締役となることができない。

一 法人

二 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者

三 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)の規定に違反し、又は金融商品取引法第197条、第197条の2第1号から第10号の3まで若しくは第13号から第15号まで、第198条第8号、第199条、第200条第1号から第12号の2まで、第20号若しくは第21号、第203条第3項若しくは第205条第1号から第6号まで、第19号若しくは第20号の罪、民事再生法(平成11年法律第225号)第255条、第256条、第258条から第260条まで若しくは第262条の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成12年法律第129号)第65条、第66条、第68条若しくは第69条の罪、会社更生法(平成14年法律第154号)第266条、第267条、第269条から第271条まで若しくは第273条の罪若しくは破産法(平成16年法律第75号)第265条、第266条、第268条から第272条まで若しくは第274条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者

四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮(こ)以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)

以下略

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端的に、説明すれば、会社法331条は、次の場合、取締役になれないとされています(あくまで概要の抜粋で一部省略しています)。

  • 成年被後見人又は被保佐人
  • 法人
  • 会社法、証券取引法,破産法関係で一定の法律に定められた罪によって刑に処せられ、その執行を終わった日から2年を経過していない者
  • 禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者

ここで見ていただきたいのは、この中に破産した人の記載が無いことです。

旧商法では、254条ノ2第2号で「破産手続開始決定を受け復権していない者」は、取締役の欠格事由となっていました

つまり、会社法では、破産した人も役員になれます。欠格規定はあえて削除されました。

理由

このように破産者が役員になれる法改正がされたのは、以下の検討とされています。

欧米では、能力さえあれば、破産していることはマイナスに評価されないそうです。実際に1社目をつぶしても2社目で成功した経営者と言う方も多くいるそうです。

それどころか、過去に破産などの経験をしていることを、一つの経営者の経験としてかえって評価する面もあると聞きます。

そして、日本でも、そのように有能な経営者が社会で活躍する場を与えるべきと言う考えから、破産は、役員の欠格事由でなくなりました。

資本主義社会ではリスクをかけて起業する以上、それに一度失敗しても再起を図れる社会設計であるべきと言うことでしょう。

これに対して、委任中の取締役については、「当初は破産していない人」として委任を受けたのだから、破産したのであれば一旦は契約を終了させて、それから株主に再度選任するかを判断してもらうために、民法の破産での委任契約の終了規定がそのまま及ぶようになっています。

 

結論

個人が破産した場合、取締役は一旦は辞めなければなりませんが、その後に再度の取締役になることは禁止されていません。

破産と言うものは、人生の再出発の制度です。

そうである以上、役員個人の方も再出発のチャンスは与えられます。