電子署名と契約書

電子署名と契約書

電子署名と契約書

契約と契約書

まず、大原則として、契約は口頭でもメールでも、両会社の意思が合致すれば、成立します。

そして、契約書面は、この合意を証明するための書面にすぎません。

紙ベースでなくても、相互の意思の合致を証明できるものであれば、契約の証拠としての意味はあります。

ですので、適切な電子署名がされた契約書は契約書として有効です。

それどころか、例えば普通の契約書をPDFで取り込んだものも、一応は裁判上の証拠になりますし、契約を証明する効力がないわけではありません。

もっといえば、メールのやり取りとか、合意の録音でも契約の証拠になります。

後述しますが、民事裁判は、証拠に制限を置いていないので、契約があったであろうと推認させるのであれば、なんでも証拠になります。

ただ、その内容に応じて、その証明力とか偽造が争われた場合の、証拠の強さに差が生じるだけです。

 

それを前提に電子署名法やE文書法について記載します。

 

契約書が必要な例外的な場合

なお、契約は自由なのが原則で、契約書を作らないことも自由と書きましたが、例外的に一定の内容のものは法律で書面でされなければならないとされています。

例えば保証契約など。

この場合は例外的に書面でなければならないとなります。

「第446条 2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。」

しかし、保証にはさらに例外の例外が規定があります。

「第446条 3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」

ですので、保証は電子契約でも有効になります。

以上から、保証契約は書面か電子書面でされる必要があります。

何に、電子化可能規定が置かれているかは、ケースバイケース、条文次第です。

ですので、法的に書面作成が義務付けられているものは、それが電子化可能な規定があるか、それに応じて調査しなければなりません。

 

電子化に関する法律

電子署名法

電子契約書にされる署名については、電子署名法で定められています。

第3条 
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

これは、わかりやすくいえば、これまでの記名押印の代わりに電子署名でも、その署名者本人が自分の意思で作った書面(契約書)とできるというものです。

電子署名は認証局で認証証明書を発行してもらい、そのキーを相手に送信する形で使うことになります(公開鍵暗号方式、なお他の方式での暗号化もありうるようです)。

これがあることで、押印された紙の契約書と同様の、いわば強い証明力をもつことになります。

 

e文書法

前記の「契約書が必要な例外的な場合」で記載したように個別の法律での条文上、電子化が定められているものもありますが、e文書法という法律でまとめて電子化が定められています。

これはいろんな法律に適用できる広範な規定になっています。

e-文書法

民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000149

この法律の4条1項、5条1項に、規定があります

第四条 民間事業者等は、作成のうち当該作成に関する他の法令の規定により書面により行わなければならないとされているもの(当該作成に係る書面又はその原本、謄本、抄本若しくは写しが法令の規定により保存をしなければならないとされているものであって、主務省令で定めるものに限る。)については、当該他の法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、書面の作成に代えて当該書面に係る電磁的記録の作成を行うことができる
第五条 民間事業者等は、縦覧等のうち当該縦覧等に関する他の法令の規定により書面により行わなければならないとされているもの(主務省令で定めるものに限る。)については、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、書面の縦覧等に代えて当該書面に係る電磁的記録に記録されている事項又は当該事項を記載した書類の縦覧等を行うことができる

いずれも「主務省令で定めるところにより」となっていますので、省令の確認が必要です。
電子化が認められなかったり、関係省庁の承認が必要な場合などの例外規定もあります。

また、以下の法律もあります。

民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/hourei/16-150gou/honbun.html

 第一章 内閣府関係(第一条)
 第二章 総務省関係(第二条―第六条)
 第三章 財務省関係(第七条―第十一条)
 第四章 厚生労働省関係(第十二条―第二十四条)
 第五章 農林水産省関係(第二十五条―第三十七条)
 第六章 経済産業省関係(第三十八条―第四十一条)
 第七章 国土交通省関係(第四十二条―第四十九条)

各管轄ごとの法律に区分して、各条文の読み替えや追記の規定が置かれています。

例えば、宅建の重要事項説明などは紙ベースしか今のところは認められていません。
下請け契約書や証券取引法、割賦販売法関係などは電子化可能とされています。

しかし、現実には、相当にややこしいので、必要が生じた場合は官庁に確認した方がよいかと思われます。

 

電子文書と民事裁判

民事裁判では、証拠は自由で原則は制限はありません(判例上、拷問のような極端な方法で取得されたものは除かれるとはなっていますが)。

電子書面も証拠になります。

裁判では、電子契約書は契約を証明するものになります。

最初に記載しましたようにメールとか、電子署名のない電子契約書なども、証明力は電子署名のある契約書より弱いですが、契約の証拠になります。

電子契約書の偽造変造の問題はありうるでしょうが、それは紙ベースの印鑑偽造などの場合と同様です(技術的には違いますが考え方として)。

なお、文書提出命令(相手が持っている文書を強制的に出させるもの)などは、条文上は「文書」となっていますが、判例上、電子データも「準文書」として提出を命令できることになっております。

 

結論

原則は、契約書は自由です。

電子化してもよいですし、紙ベースでもよいです。

契約書の形でなくても、発注書と請書のファックスやメールのやり取りも一応は契約を推認させる証拠になります。

契約相手と合意できるならば、電子署名を用いても用いなくてもよいです、証明する力に差が出るだけです。

ただ、一部だけ、書面にすべきことが法律で決まっている例外があります(民法、下請法など各種法律 など)。

そして、この例外の書面にすべき場合は、紙だけでなく電子化による作成が認められている場合があります

民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律+各種省令)

民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)。

これは個別に確認していくしかありません。

なお、書面の保管も電子化が認められているものとそうでないものがあります。

これは作成の問題とは切り離して検討してください。

また、この分野の法律は、まだ過渡期のところもあり、変更や修正がしばしばされますので、ご注意ください。

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