2021.04.04

弁護士の雑談7

弁護士の雑談7

雑記7

費用を払う解決を勧めること

弁護士として相談を受けていて、依頼者に言いにくいことが、時折あります。

言いにくいことの理由の方向性はいろいろありますが、今回、お伝えしたいのは、

弁護士や事務所に利益が出て、依頼者に費用がかかることは言いにくい

ということです。

 

依頼者がお金を払うことになる方向の解決は、なんとなくお金を要求しているように思えて、勧めにくいところがあります。

依頼者の方は、現時点で苦労しているのにさらに負担を申し入れるのは、気になりますし、また、自ら、お金の話を切り出すことは品が無いように思えるからです。

 

それならば、「単に、そういう方向の解決方法は、勧めなければよいのではないか」と思われるかもしれませんが、

事案的に「お金をかけても裁判した方がよい可能性が高い」、「お金がかかっても、今、仮差押をしておかないと事後に回収困難になる」と言う場合は、よくあります。

そういう場合は、そのような方針を勧めないことは依頼者に対する適切なアドバイス出ないということになるでしょう。

 

私が言いにくそうに裁判の依頼を勧める場合は、「お金がかかる行為なので勧めにくい、でも状況から裁判が一番メリットになると思える」そういう心境でのことです。

 

時間がかかった裁判

法律相談や法律交渉の依頼で気になることとして、

「事案の解決のために交渉していたが、結局訴訟になり、上訴になり、長引いたりした場合、(交渉だけで解決せずに)費用も時間もかけて、依頼者に申し訳なく思う」

ことがあります。

最近、一般論としてですが、逆のことを依頼者に言われました。

 

というのは

「訴訟になったり、長引いたり、上訴になったりした場合は、これだけ大変なことになり弁護士も時間と手間をかけてくれたのだから、早めに依頼して良かったし費用が掛かっても納得いきます。」

「逆に、交渉ですぐに終わったり、裁判しなくて済んだなら、自分でもできたのではないかとか、依頼しなくてもよかったかなという気になります」

というものです。

 

前のブログをみて、気を使ってくれたのかもしれませんが、「なるほど、そういう考え方もあるのだな」と思いました。

結局のところ、依頼者の方は高額の費用を支払う以上、それに見合った対応をしてくれるのかと言うことが気になるのでしょう。

 

弁護士は、特定の方向だけを見るのでなく、その依頼者の方に会わせて、それぞれの依頼者の方が満足してくれるように努力しなければならないと考えております。

 

書面を寝かせる日

弁護士での処理に時間がかかる理由はいくつかあります。

その中の一つが、書面や案を寝かせる期間の存在です。

 

書面や案を書くときは、ある程度、依頼者の側に頭の中が寄っておりますし、依頼者のためを思って全力で記載します。

しかし、その時の勢いで書いた書面は、裁判所や交渉相手に対する法的主張として適切な書面でなかったり、無意味な弁解が入っていることもあります。

それどころか、かえって不利なことや相手が揚げ足を取りやすいような内容の記載が混ざっていることもあります。

そのため、その書面をそのまま出すのではなく、冷静になって、見直す時間が必要です。

 

この見直しですが、直ちに見直しても、なかなか良い見直しはできません。

その書面を書いた時の心情などが残っており、記載の記憶も残っているので、客観的に冷静な視点を持ちにくいからです。

しばらく置いて、冷静になってから、他人が書いた文章という心情で見直すのがベストです。
(もっとも、時間がぎりぎりで置けない場合はありますが)

 

このような期間、弁護士以外の人から見れば、ただ時間をおいているだけで何もしていない無駄な時間に見えるかもしれません。

しかし、より完全な書類の作成には、どうしても必要な期間になります。

 

弁護士業務はIT技術で、パターン化できるか

弁護士という仕事をしていて、特に気を付けなければならないと思うのが、個別的な事例の微妙な差での結論の変化です。

 

相続でも交通事故でも会社の訴訟でも、何百件も相談を受け訴訟をしていれば、おおよそのパターンのようなものが頭に出来上がってきます。

それで、パターンのようなものに当てはめて、そのまま回答しそうになります。

しかし、実際にパターンに完全に当てはまることなど、ありません。

おおよその目途程度の回答は、分野によっては出来ることもありますが。

 

しかし、全面的にIT化できるかというと、これは別の話です。

予定外の部分が必ず出てきますし、しかも、この予定外の部分こそ深く掘り下げるべきポイントであったりします。

 

弁護士は、人と人のトラブルに介入する仕事です。

一人一人の人間を一定の類型に当てはめても正確にその人が理解できることはありません。むしろ、誤った偏見にもつながります。

また、人と人の関係も十人十色で、パターンわけしても正確な関係の把握はできません。

そうであるならば、人と人との関係で生じるトラブルをパターン化できるわけがないのは、当然です。

適切な事件の把握と解決に、この意識は忘れてはならないものだと思っております。

 

ところで、法曹は業務上パターンわけをしがちな職業だと思います。

というのは、法曹は、社会にある個別の事象を法律という一定の枠にはめ込む仕事だからです。

法律という一定の枠、言い換えれば一定のパターンに、ものごとを当てはめて結論を出す仕事であるので、逆にパターンから考えて社会の事象を取り上げようとしがちになります。

結論の法律の枠ありきで、事件を考える方が処理が早く、かつ楽に処理できますからね。

ですので、法曹は業務のパターン化をしがちになってしまいます。

 

弁護士業をパターン化して、AIに判断を任せることができる、こういう勘違いをしがちなのは、法律論にある上記のようなものの見方が原因でしょう。

しかし、実際にパターン化しての検討は誤った結論に結び付く可能性があります。

なぜならば、当然ではありますが

「まず最初に一定のトラブルパターンと解決パターンが存在し、それに対して世の中や社会がある」わけでないからです。

「最初にあるのは多様で雑多な世の中や社会であり、その個別具体具体的な事情を理解して、トラブルパターンや解決パターンとの比較ができる」からです。

 

結局は、AIやITでパターン化しても、簡易な概要判断だけならともかく、最終的な解決までとなると難しいでしょう。

むしろ、事案ならではの特殊性を、普段のパターンから外れる検討事項として見落とす危険があるからです。

 

常にひとつずつの事件を、唯一の事件と理解して、対応していくこと

この意識を忘れないように、気を付けています。

 

なお、最終的に人の考えや社会的または家庭内の営み一切が、AIで判断できるようになれば、弁護士業も裁判所もコンピューターで代行は出来そうです。

もっとも、その時は、世の中の仕事は、ほとんど機械がやっているでしょうが。

現在でも、概要などのおおよその目途をつける場合、関連判例や条文を捜索する場合には、PCは大変役に立っています。

要するに使いようで過信してはいけないということかと思います。

 

 

兵庫県西宮市のあさがお法律事務所

弁護士岡田晃朝(おかだ あきとも)紹介

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