弁護士の持つ調査権

弁護士の持つ調査権

弁護士の調査権と制限

 

弁護士は他の職業にはない一定の調査権限を持っております。

以下、概略をご説明しようと思います。

 

弁護士照会

(報告の請求)

弁護士法 第23条の2 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。

2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

 

これは弁護士会を通じての調査権で、弁護士の持つ調査で主要なものです。

電話番号などから住所調べることがおおいです(必ず可能なわけではありません)。

 

住民票、戸籍、固定資産税の課税証明

第三者の住民票の調査や戸籍、固定資産税の調査も可能です。

以下の法律に従って、定められた要件にそって調査できます。

戸籍法10条の2 第一項の規定にかかわらず、弁護士(弁護士法人を含む。次項において同じ。)、司法書士(司法書士法人を含む。次項において同じ。)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法人を含む。次項において同じ。)、税理士(税理士法人を含む。次項において同じ。)、社会保険労務士(社会保険労務士法人を含む。次項において同じ。)、弁理士(特許業務法人を含む。次項において同じ。)、海事代理士又は行政書士(行政書士法人を含む。)は、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。

住民基本台帳法 12条の3 2 市町村長は、前二条及び前項の規定によるもののほか、当該市町村が備える住民基本台帳について、特定事務受任者から、受任している事件又は事務の依頼者が同項各号に掲げる者に該当することを理由として、同項に規定する住民票の写し又は住民票記載事項証明書が必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該特定事務受任者に当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書を交付することができる。
3 前項に規定する「特定事務受任者」とは、弁護士(弁護士法人を含む。)、司法書士(司法書士法人を含む。)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法人を含む。)、税理士(税理士法人を含む。)、社会保険労務士(社会保険労務士法人を含む。)、弁理士(特許業務法人を含む。)、海事代理士又は行政書士(行政書士法人を含む。)をいう。
(固定資産課税台帳に記載をされている事項の証明書の交付)
地方税法 第三百八十二条の三 市町村長は、第二十条の十の規定によるもののほか、政令で定める者の請求があつたときは、これらの者に係る固定資産として政令で定めるものに関して固定資産課税台帳に記載をされている事項のうち政令で定めるものについての証明書を交付しなければならない。

地方税法施行令 第52条の15 法第三百八十二条の三に規定する政令で定める者は、次の表の上欄に掲げる者とし、同条に規定するこれらの者に係る固定資産として政令で定めるものは、同表の上欄に掲げる者について、それぞれ同表の中欄に掲げる固定資産とし、同条に規定する固定資産課税台帳に記載をされている事項のうち政令で定めるものは、同表の上欄に掲げる者について、それぞれ同表の下欄に掲げる事項とする。

四 民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)別表第一の一の項から七の項まで、一〇の項、一一の二の項ロ、一三の項及び一四の項の上欄に掲げる申立てをしようとする者

 

裁判所を通じての照会、嘱託、財産開示

裁判所の手続きでの照会や開示請求も可能です。

これらは、弁護士でなくても可能ですが、裁判上の手続きで、それなりに検討を要するものですから、弁護士に依頼することが多いと思います。

民事訴訟法

(調査の嘱託)
第186条 裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。

(文書提出命令等)
第223条 裁判所は、文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは、決定で、文書の所持者に対し、その提出を命ずる。この場合において、文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて、提出を命ずることができる。
(文書送付の嘱託)
第226条 書証の申出は、第二百十九条の規定にかかわらず、文書の所持者にその文書の送付を嘱託することを申し立ててすることができる。ただし、当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合は、この限りでない。
 
民事執行法
第197条
1 執行裁判所は、次のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本(債務名義が第22条第二号、第三号の二、第四号若しくは第五号に掲げるもの又は確定判決と同一の効力を有する支払督促であるものを除く。)を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。
一 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。
二 知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。
 

裁判例やその他法律によるもの

例えば、以下の裁判例で、消費者金融は「債務者」に対して取引履歴の開示が義務付けられています。他にも個人情報の当該情報主体への開示義務などもあります。

これも本人が請求できるものを弁護士が代わってするもので、本人ご自身でも可能ではあります。

ただ、各業界や事情に応じて、個別に定めてあるものですから、どういう法律やどういう裁判例で、誰が請求出来るのかなど、弁護士に確認せざるを得ないこともあるでしょう。

平成17年7月19日最高裁判所第三小法廷判決

「貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上,保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む。)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負う」

個人情報保護法(保有個人データに関する事項の公表等)
第二十七条 個人情報取扱事業者は、保有個人データに関し、次に掲げる事項について、本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む。)に置かなければならない。
 

調査の限界

これらの調査権は、あくまで、その事件を解決するために、事件の依頼を受けて行うものです。

弁護士会の懲戒情報に、正当な理由がなく個人情報を調査した弁護士が懲戒処分を受けてることがありました

 

あくまで事件解決のための調査ですので、事件依頼あるいは事件依頼の前提調査のためでなければ調査できません。

まれに、「後は自分で交渉するので、調べるだけ調べてくれませんか」という依頼はありますが、できません。

決して、意地悪しているわけではありません。

 

弁護士が特に調査権が与えられているのは、弁護士業務の職務上の必要性と、そして弁護士としての適正な対応をする限りは不当に利用しないであろうという職業に対する信頼があるからと考えております。

私は、弁護士としての、この職務に対する信頼を守るため、少なくとも私なりに証拠を検討して、調査が必要と思える場合のみを対応を受けるようにしております。

法律上もそれを前提に定められています。

弁護士の権限は、それはあくまで公正な裁判の実現、適切な権利の行使や回復に使われなければならないものです。

また、当然ですが、それ以外の法律上の要件にも沿って、行われなければなりません。

 

 

開示の限界

また取得した資料は、依頼者ご本人の権限では開示できないものについては、いくら依頼者のご要望があっても開示できない、引き渡せないものもあります。

あくまで弁護士が管理して、業務に必要な限度で使い、不要になれば適切に処分する、そういう信用で開示されているので、依頼者といえども見せることができないのです。

お金を払った依頼者からすれば、資料がもらえないのは納得いかないかもしれませんが、ご理解ください。

(なお、依頼者本人でも取得できる資料を代行取得した場合(相続時の戸籍など)はお渡しできます。)

あさがお法律事務所でも、事件に必要な範囲で利用した後、事件の終了後に、機密文書専門の溶解処理サービスで処理をしております。

兵庫県 西宮市のあさがお法律事務所

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