弁護士の判断
初めに
弁護士は専門家です。
依頼者のために活動はしますが、存在する法律は決まっておりますし、虚偽を述べることはできませんし、事実は限られております。
皆さんの希望
弁護士に相談に来られる方は、現状を何とかしてほしいという思いを持っておられます。
そのことは弁護士としても十分理解して検討します。
優秀な弁護士なら勝てるはずと、心から信じて相談に来られます。それは十分に理解しております。
しかし、専門職として専門的視点から回答するので、「専門的に見ればどうしようもない」、「不利な状況であるとの回答しかできない」、そういうこともあります。
そして、なかなか、これをご理解いただけない方もいます。
現実には
冷静に検討してみてください。
日本は法治国家です。
法治国家である以上は、少なくともほとんどの事案は、法律と判例で、法律の専門家が見れば「こうなる」という決まった筋道、結論があります。
ドラマでは面白い逆転勝訴のストーリーはあります。
が、現実に弁護士のさじ加減で「有罪が無罪」、「敗訴が勝訴」に変わるようでは、もはや、まともな法治国家・司法国家ではありません。
弁護士で判断が分かれる時がないとは言いませんが、そのようなものは、感覚的には全体の1割程度ですし、そういう時は弁護士も「微妙ではありますが」と前置きをします。
(弁護士を雇うのは、むしろ「間違いのない処理、法律通りに適切な処理をしてもらうため」と考える方が良いかと思います。)
「不利ならば不利」、「依頼者にメリットがなければない」、「無理なことは無理」そのことをお伝えするのが仕事です。
相談者の方の中には、そのことを正直に誠実にご説明すると「回答がおかしい」「それでも何とか対処方法を伝えろ」とお怒りになられる方もおられます。
中にはネット上に記載された100件に1件もないようなレアケースの判例や極めて少数説の学説をもってきて、「これで何とかしてください」と言われることもあります。
しかし、そのようなことはできません。
医師が末期癌の患者に余命を回答したり(1%の可能性で治るかもしれませんが)、
税理士が多額でも払うべき税は支払うよう(たとえ脱税できても、それを指南するのはまともな税理士ではありません)回答する
それと同じです。
それが法律の専門家としての見通しであれば、依頼者が望まなくてもそれを回答します。
結論
「無理なものは無理」「メリットがないことはメリットが無い」と正直にお伝えするほうが、専門家として誠実と私は考えております。
(末期癌なのに「神の水で癌が治ります」と説明する人の方が問題と考えております)
その点はご理解いただきたいと思っております。
正直、「私どもも相談者のために」と考えて回答してますので、間違いのない回答をしたのに「わかってない!」と逆切れされると結構、へこみます。
また、検討の結果、厳しい回答をするときは、相談者の方ほどではないものの、弁護士側も、気落ちしているときは多いです。