ネットの記載は法律相談代わりになるか

ネットの記載は法律相談代わりになるか

ネットの記載と弁護士としての意見

初めに

ネットや雑誌、新聞などを見ると、何となく情報が入ってくることがあります。

そして、そうやって手に入れた知識で、日常生活を暮らしております。弁護士もプライベートでは、そうです。

しかし、弁護士が仕事として確認する場合は、より確実に根拠条文に当たって、対応することになります。

 

弁護士も普段から、常に仕事をしているわけではないですから、日常会話などでは、新聞で得た情報などで雑談します。

例えば「ペイオフの法律ができて、預金は1000万円までしか保証されないって」というような話です。

普通の雑談ですから、「ペイオフの法律って、正式に何という法律か」とか、「預金って、何預金か、どういう定義か」とか、「そもそも条文はどうなっているの」などは言いません。

しかし、ひとたび仕事での確認となると、これは変わります。

 

一例(ペイオフ)

まず、ペイオフと言うのは、預金保険法上の制度です。この根拠法と条文を調べることから始めます。

そして、預金保険法には以下の規定があります。

ポイントは、たったの3条ですが、ややこしいので、ざっと読み飛ばしてください。

————-預金保険法———
(一般預金等に係る保険金の額等)
第五十四条 一般預金等(他人の名義をもつて有するものその他の政令で定める一般預金等を除く。以下「支払対象一般預金等」という。)に係る保険金の額は、一の保険事故が発生した金融機関の各預金者等につき、その発生した日において現にその者が当該金融機関に対して有する支払対象一般預金等に係る債権(その者が前条第一項の請求をした時において現に有するものに限るものとし、同条第四項の仮払金(支払対象一般預金等に係るものに限る。以下この条において同じ。)の支払又は第百二十七条において準用する第六十九条の三第一項の貸付けに係る支払対象一般預金等の払戻しにより現に有しないこととなつたものを含む。次項において同じ。)のうち元本の額(支払対象一般預金等のうち第二条第二項第五号に掲げるものにあつては、当該金銭の額。以下同じ。)及び利息等(当該元本以外の部分であつて利息その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)の額の合算額(その合算額が同一人について二以上ある場合には、その合計額)に相当する金額とする。
2 支払対象一般預金等に係る保険金の額は、前項の元本の額(その額が同一人について二以上あるときは、その合計額)が政令で定める金額(以下「保険基準額」という。)を超えるときは、保険基準額及び保険基準額に対応する元本に係る利息等の額を合算した額とする。この場合において、元本の額が同一人について二以上あるときは、保険基準額に対応する元本は、次の各号に定めるところにより保険基準額に達するまで当該各号に規定する元本の額を合計した場合の当該元本とする。
一 支払対象一般預金等に係る債権のうちに担保権の目的となつているものと担保権の目的となつていないものがあるときは、担保権の目的となつていないものに係る元本を先とする。
二 支払対象一般預金等に係る債権で担保権の目的となつていないものが同一人について二以上あるときは、その弁済期の早いものに係る元本を先とする。
三 前号の場合において、支払対象一般預金等に係る債権で弁済期の同じものが同一人について二以上あるときは、その金利(利率その他これに準ずるもので政令で定めるものをいう。次号において同じ。)の低いものに係る元本を先とする。
四 前号の場合において、支払対象一般預金等に係る債権で金利の同じものが同一人について二以上あるときは、機構が指定するものに係る元本を先とする。
五 支払対象一般預金等に係る債権で担保権の目的となつているものが同一人について二以上あるときは、機構が指定するものに係る元本を先とする。
3 保険事故に係る預金者等が当該保険事故について前条第四項の仮払金の支払を受けている場合又は第百二十七条において準用する第六十九条の三第一項の貸付けに係る支払対象一般預金等の払戻しを受けている場合におけるその者の支払対象一般預金等に係る保険金の額は、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による金額につき政令で定めるところにより当該仮払金の支払及び第百二十七条において準用する第六十九条の三第一項の貸付けに係る支払対象一般預金等の払戻しを受けた額(次項の規定により機構に払い戻されるべき額を除く。)を控除した金額に相当する金額とする。
4 保険事故に係る預金者等について支払われた前条第四項の仮払金の額が、第一項及び第二項の規定による保険金の額のうち政令で定めるところにより計算した額を超えるときは、その者は、その超える金額を機構に払い戻さなければならない。
(決済用預金に係る保険金の額)
第五十四条の二 決済用預金(他人の名義をもつて有するものその他の政令で定める決済用預金を除く。以下「支払対象決済用預金」という。)に係る保険金の額は、一の保険事故が発生した金融機関の各預金者につき、その発生した日において現にその者が当該金融機関に対して有する支払対象決済用預金に係る債権(その者が第五十三条第一項の請求をした時において現に有するものに限るものとし、同条第四項の仮払金(支払対象決済用預金に係るものに限る。次項において同じ。)の支払又は第六十九条の三第一項(第百二十七条において準用する場合を含む。次項において同じ。)の貸付けに係る支払対象決済用預金の払戻しにより現に有しないこととなつたものを含む。)のうち元本の額(その額が同一人について二以上あるときは、その合計額)に相当する金額とする。
2 前条第三項の規定は、その有する支払対象決済用預金に関し保険事故に係る預金者が当該保険事故について第五十三条第四項の仮払金の支払を受けている場合又は第六十九条の三第一項の貸付けに係る支払対象決済用預金の払戻しを受けている場合について準用する。この場合において、前条第三項中「前二項の規定にかかわらず、これらの規定」とあるのは、「第五十四条の二第一項の規定にかかわらず、当該規定」と読み替えるものとする。
(確定拠出年金に係る預金等の特例)
第五十四条の三 一の保険事故が発生した金融機関の預金者等が確定拠出年金法(平成十三年法律第八十八号)第二条第七項第一号ロに規定する資産管理機関(同法第八条第一項第一号に規定する信託の受託者に限る。)又は同法第二条第五項に規定する連合会若しくは同法第六十一条第一項第三号に規定する事務の受託者(信託会社(信託業務を営む金融機関を含む。)に限る。)(以下「資産管理機関等」という。)である場合におけるその者の保険金の額は、保険金計算規定にかかわらず、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した残額に第三号に掲げる金額を加えた金額とする。
一 当該資産管理機関等の支払対象預金等(支払対象一般預金等又は支払対象決済用預金をいう。以下同じ。)に係る債権(当該支払対象預金等を有する預金者等が第五十三条第一項の請求をした時において現に有するものに限るものとし、同条第四項の仮払金の支払又は第六十九条の三第一項(第百二十七条において準用する場合を含む。)の貸付けに係る支払対象預金等の払戻しにより現に有しないこととなつたものを含む。以下この条において同じ。)のうち確定拠出年金の積立金(確定拠出年金法第八条第一項に規定する積立金をいう。以下この条において同じ。)の運用に係るものについて、当該運用を指図した加入者等(同法第二条第七項第一号イに規定する加入者等をいう。以下この条において同じ。)のそれぞれにつき、当該保険事故が発生した日(以下この項において「保険事故日」という。)において現に当該資産管理機関等が当該金融機関に対して有する支払対象預金等に係る債権のうち当該加入者等の個人別管理資産額(同法第二条第十三項に規定する個人別管理資産額をいう。)に相当する金額の部分(次項において「個人別管理資産額相当支払対象預金等債権」という。)を当該加入者等の支払対象預金等に係る債権とみなして保険金計算規定を適用した場合に保険金の額とされる金額の合計額
二 保険事故日において現に当該加入者等が当該金融機関に対して有する支払対象預金等に係る債権について保険金計算規定によりそれぞれ保険金の額とされる金額の合計額
三 保険事故日において現に当該資産管理機関等が当該金融機関に対して有する支払対象預金等に係る債権のうち確定拠出年金の積立金の運用に係るもの以外のものについて保険金計算規定により保険金の額とされる金額
2 前項第一号の規定により第五十四条第二項の規定を適用する場合における保険基準額に対応する元本は、次の各号に定めるところにより、保険基準額に達するまで当該各号に規定する元本の額を合計した場合の元本とする。
一 前項第一号の規定を適用する前の当該加入者等の支払対象預金等に係る債権と当該資産管理機関等の支払対象預金等に係る債権のうち当該加入者等の個人別管理資産額相当支払対象預金等債権があるときは、当該加入者等の支払対象預金等に係る債権の元本を先とする。
二 当該資産管理機関等の支払対象預金等に係る債権のうち当該加入者等の個人別管理資産額相当支払対象預金等債権が二以上あるときは、機構が指定するものに係る元本を先とする。
3 第一項の場合において、第五十三条第一項の規定により資産管理機関等に保険金の支払が行われたときは、当該保険金のうち加入者等に係る第一項第一号に掲げる金額から同項第二号に掲げる金額を控除した額に相当する額は、当該加入者等の個人別管理資産(確定拠出年金法第二条第十二項に規定する個人別管理資産をいう。)に積み立てられたものとみなす。
4 第一項の場合における第二条第十一項の規定の適用については、同項中「及び第五十四条の二第一項」とあるのは、「、第五十四条の二第一項並びに第五十四条の三第一項及び第二項」とする。
—————–預金保険法————-

条文を読めば、どうも「普通預金や定期預金」と「当座預金などの無利息預金」と「確定拠出年金」とは取り扱いが違い、「「普通預金や定期預金」は保証に限度があるようだぞ」と言うことがわかります。

きっちりと条文の確認をしないと、この点もあいまいな方は、ごく普通におられるでしょう。

 

しかし、ここまでややこしい規定を読んでも、1000万円の金額は出てきません。

そして、さらに調べれば、以下の規定がわかります。

————預金保険法施行令-——–
預金保険法施行令(昭和46年政令第111号)

第6条の3
法第五十四条第二項に規定する政令で定める金額は、千万円とする。
————預金保険法施行令———

ここで初めて、ペイオフと言うものは、利息の付く預金債権について1000万円まで保証される制度という回答ができます。

ペイオフについては、これくらいですが、よく紛争になる事案(労働法とか交通事故、離婚や相続、下請や元請の取引関係など)では、さらに裁判例を調べていきます。

そして、そのうえで、一定の結論を確認し、それを依頼者や相談者の方に説明します。

 

小括

このように、ネット上の雑談記事や新聞記事、雑誌の記事などは、一つの参考にはなりますが、法律家としての仕事をする上での資料、裁判に提出する資料としては、不完全なものです。

参考にされるのは良いですが、重大な局面では、盲信は避けるようにしましょう。

あくまで条文、政令、省令、条例、ガイドラインにあたり、そして判例や審決例を調査し、確認が必要です。

ネットの記事は、その足掛かりには良いですが、最終的な回答ではないということには注意しましょう。

 

 

 

検索ワードの問題

先日、テレビで、ネット検索のコツという番組をやっていました。そこでインターネット専門家が言っていたのは

「インターネットの検索において、適切な検索をするには、適切なキーワードでなければならない。そして、普段から深く調べ、相当の知識を持つ人でなければ、適切なキーワードはわからない。」

というものでした。

 

私どもも、インターネットで調べることがないわけではありません。

しかし、一般の方とは違うキーワードで調べることも多いです。

それにより、適切な回答にたどり着けることがあります。

 

検索先などについても、弁護士は有料の判例データベースや論文データベースと契約していることも多いですので、そういう差もあります。

 

ネットで調査して行き詰っていても、弁護士に相談すれば解決があることはあります。

 

 

その他 ネットでの調査の注意点

(1)作成名義

ネット情報で注意すべき点ですが、

まず、実名あるいは実在する機関が作成したサイトかどうかを注意すべきです。

匿名の情報については、意味がありません。

次に、実名実在の機関として、では、その相手が信用できる人物、機関かを確認しなければなりません。

肩書や組織がどういうものかです。

よくわからない機関や人物の場合、その情報も真偽はよくわからないものとなるでしょう。

(2)まとめサイトの注意

ここで注意すべきは、まとめサイト、ランキングサイトのようなものです。

これらは、ほかのサイトの情報などをまとめていたりしますが、この場合は、その引用元とまとめサイトの運営者、両方が信用できるか確認する必要があります。

まとめサイトには、もっともらしく書いてあっても、実際に確認するとその引用元のサイトに、どこにもそのような記載がないことも、しばしばあります。

これに類似するものとして、表現が伝聞のときも注意が必要です。

このような記載については、あまり信用できないものと考えるほうが良いでしょう。

(3)情報の鮮度

記載内容にも注意が必要です。

それなりに信用できる機関のサイトでも、載せられている情報が古いこともあります。

注意すべきなのは、本来のサイト内では古い情報は過去の情報として、現在の情報と切り分けられて、まとめられていても、検索した際に、その古い情報ページだけが元のサイトと切り離して検索できることがあることです。

あたかも古い情報が現在も有効のように見えるので注意が必要です。

逆に言えば、「作成した日付が入っているか」というのは、情報の正確性を見分ける一つの指標になるとも言えます。

(4)偏った情報が多い

いろいろなサイトを見て思うのが、やや極論が多いなという印象です。

間違えているというわけではないですが、めったにない極端な判決が多い気がします。

 

なぜかということですか、これは推測になりますが、

①弁護士事務所などが裁判例や過去の事例をあげるときは、どうしても派手な判決をあげがちになること
②学者の先生は、その事案でありうる最低限レベルと最高レベルの判決を比較して研究して、その考え方ができる範囲を検討するので、極端な判例を取り上げることが多いこと
③マスコミなども、読者が興味を引くような極端な判決を取り上げがちなこと

があげられます。

実際には、ネット情報よりも、もっと中庸な判決のほうが多いと思いますので、十分、注意して広くチェックする必要があるでしょう。

(5)重要なことは専門家に確認

例えば、「理由もないのにお金の請求をされている」と言われても

契約書を見ない、仕事関係なのかプライベートなのか、相手との関係、相手からの書面や具体的な会話の詳細を確認しないと回答はあいまいなものになります。

ネットで、2~30行程度の文章での質問や回答では、結局はあいまいな回答しか得ることはできません。

医療問題で考えてみてください、「おなかが痛い」と検索して、「胃腸が悪いのでしょう」との回答を見て、市販の胃薬を飲んだが治らない、精密検査をすれば「胃がんであった」というのであれば、中途半端な検索がかえって症状を悪化させているだけです。

法律問題でも同じようなことはあります。

 

 

まとめ

弁護士もネットで情報を検索することはよくあります。

最終的には、書物から引用する資料も、ネットで検索してあたりを付けてから調べるほうが、相当に早く処理できます。

有効利用すべきものではありますが、盲信はやめるべきでしょう。

兵庫県 西宮市 あさがお法律事務所

弁護士 岡田晃朝(おかだ あきとも)の紹介

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