親族会社の実体と法律
あさがお法律事務所は、中小企業専門の顧問弁護士をしておりますので、親族だけで役員と株主を構成している会社からの相談をしばしば受けます。
そには特徴的な問題があることがあります。
それは、こういう親族中心の会社では、よく親族間で事実上の業務分担や役職をつけていたり、逆に登記上だけでの役割を作っていたりしながらも実態がないことがあることです。
実例
たとえば、長男が代表者、その妻と母親が役員と登記されているが、実際は、お父さんが会長を名乗って、すべてを取り仕切り、長男が中間管理職で、その妻と母親は名前だけで何もしていないなど。
そして株は適当にその親族で割り振られたりしています。
これらは、税務対策や将来の承継などの諸事情を考慮してことだと思います。
会社が問題なく順調にいっているとき、そして家族関係が順調な時はそれでトラブルは表面化しません。
しかし、ひとたび関係に変化があれば、この登記などの形式と実態との齟齬が大きな問題になることがあります。
法的には形式上の名義は関係なく、実際の権利者が権利を持ちます。
しかし、実際には表面的な名義(株主名簿や決算書)があれば権利も強く推認されるので、これを覆すのが難しいことになります。
離婚する相手に名義を置いておくというのは、リスクがありますので、結局、無駄な費用をかけて買い取らないといけないこともあります。
取引相手は登記を見て、記載の役員を信用して取引するのに、その役員が内輪では何もしていなかったでは、取引相手が害されるからです。
何もしていないと責任がないとお考えの人もいますが、取締役は経営を監視し、適切に進める義務がありますから、何もしていないことで責任が発生することもあるのです。
代表権があるとは限りませんし、実権があるとも限りません。
登記上の代表者である子と親子の関係が悪化した場合には、実権をめぐって、ここでも問題が生じることがあります。
会社の株も遺産ですから、所有者が亡くなれば相続が生じます。
ここで、事業承継を検討して株についての遺言や生前贈与がないと、経営の意向がない人に多数の株が流れたり、実質上の経営者や代表者が過半数の株を失ったりします。
そうすると、結果的には会社が乗っ取られたり、解散するしかなくなったりすることもあります。
・その他
会社の登記や決算書、帳簿上などの名目と、実際の権利関係の齟齬については、注意しておく必要があるでしょう。
まとめ
この話をすると、経営者の方は「考えなあかんなあと思ってるんですが、なかなか」と言われますが、なかなかきっかけがないようです。
本業もあるでしょうし、その気持ちはわかります。
しかし、トラブルになってからでは大変です。
特にこの種の案件は、事前に準備して適正にしておけば、回避できるトラブルです。
そこを考えれば、まずは相談だけでもされるとよいと思います。