遺留分減殺請求
はじめに
遺言がある場合、その遺言の内容によって、遺産は分割されます。
そもそも財産は亡くなられた人のものですので、亡くなった人が、どう処分しようが自由ですし、死者の最後の意思は十分に尊重される必要があります。
では、遺言があれば、すべてその通りに相続されるか。
答えはノーです。
遺言で自由に決められると、それでは残された遺族の生活が確保できない場合があります。
そこで、残された遺族の生活の保護を考慮して認めれれた制度が遺留分減殺請求権です。
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遺留分減殺請求権
遺言があっても、配偶者や子には必ず受け取れる遺留分と言う範囲が法律上あります。
この規定により、法定相続分の2分の1あるいは3分の1は、遺言にかかわらず取得できます。
遺留分減殺請求についての誤解
この規定について、以下のような点、しばしば誤解されている方がいます。
①当然に貰えません。
亡くなったことを知って1年以内に遺留分減殺請求を行わなければなりません。(民法1030条)
放置していてはもらえません。
私どもも、相続について依頼を受ければ、念のために遺留分減殺請求は早めにしておきます。
他の協議や調査が必要な場合は、金額が未定のままで遺留分減殺請求を行います。
②兄弟姉妹はありません
あくまで、親子や夫婦の相続の際の規定であり、兄弟姉妹ではありません。
これは、この規定が残された遺族の生活のためと言う一面があるからです。
例えば、家庭の預貯金を夫の前でしていた場合、夫が遺言で愛人に遺産を譲ると、妻は生活できなくなります。そこでそういう遺族の生活を保護するための規定が本規定です。
兄弟は通常は、その亡くなった人に扶養されているということは無いので、遺留分はありません。
③生前でも放棄できます。
相続放棄は生前にはできませんが、遺留分の権利は生前に家庭裁判所で放棄できます。
ただし、自由ではありません。以下の通り、家庭裁判所が事情などから相当と考えて許可した場合のみ可能です。
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第1043条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
④排除できますが、よほどの事情が必要です。
他に、被相続人側から、生前に遺留分を認めない、廃除という方法もあります。
遺留分すら与えるに値しないと見れる相手は、被相続人側から排除できます。
遺言でも排除できます。
ただし、よほどの非行事情が必要で、気に入らない程度では認められません。
遺留分についての諸問題
権利の行使先はだれか。
遺留分の請求書面はできたけど、誰に送ったらいいのですか(遺留分の侵害者に送ればよいのか、全相続人に送るのか、転得者にも送るのか等)という相談も時折あります。
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更に実際の計算。
不動産などをどう評価するか。
相続開始前1年以内の贈与はどうなるのか。
それとは別に特別受益の範囲をどう考えるか。
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また、実際に権利行使をしても、無視して財産を取り込んだままという人もいます。
普通の相続の時は、登記移転は相続人全員の同意でないとできませんし、銀行の凍結も相続人全員でないと解けませんが、遺言があるときは受遺者は単独で財産の取り込みが可能です。
遺言だけで銀行も登記所も対応するからです。
こういう人から、遺留分の分の財産をどうやって取り返すかという問題もあります。
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さらに相続財産が自社株の場合、遺留分行使はどうなるか。
この点、事業承継の特例規定がありますが、これについても専門的な判断が必要です。
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まとめ
実際の権利行使では、このように様々な問題が生じます。
相続は金額が大きく、行使期間が短く、表現や対応で無効になることがあり得る部分もあります。
弁護士と相談しつつ、慎重に進めるのがよいでしょう。