認知症など判断力を欠く方がいた場合の遺産相続
現状
厚生労働省は2015年1月7日、全国で認知症を患う人の数が2025年には700万人を超えるとの推計値を発表しました。
65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症を患う計算となります。
最近は亡くなる方も高齢化していますので、相続を受ける方も高齢化しています。
このため相続を受ける人が認知症ということもあります。
「認知症など判断力を欠く方がいた場合の遺産相続・遺産分割協議」についてご説明します。
遺産分割協議とは、遺言がない場合に、亡くなった人の財産を分割する話し合いです。
高齢者であっても、相続人に判断能力がある場合は問題ありません。
集まって遺産分割協議をすればよいです。入院中でも病院に集まったり、持ち回りでの話し合いも検討できます。
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遺産分割協議の効力
これは出来ません。相続人全員参加しないと無効になります。
遺産分割協議は相続人全員の合意により成立します。いったん成立すれば効力が生じ、無効や取消の原因がない限り、原則としてやり直しすることはできません。
遺産分割協議では、参加すべき人を欠いてされた場合は無効となります。
では全員参加すれば有効か?
認知症などの相続人がいた場合、判断力が欠く人でも一応の形式上、参加すれば有効に遺産分割協議が成立するでしょうか。これは成立しません。
遺産分割協議も法律行為ですから、有効に成立させるには私法上の法律行為を単独で完全におこなうことができる能力が必要です。
ですので、判断力を欠く人が、形の上で、そのまま遺産分割協議に参加して同意しても、有効に遺産分割協議を成立させることができません。
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認知症の人がいた場合にすべきことは?
認知症などの判断力が欠く人が相続人にいる場合は、どうすべきでしょうか?
それは、判断力のない本人に代わって財産管理をする人、つまり「後見人」を立てて遺産分割協議を行う必要があります。
家庭裁判所にて、後見人を付してもらう申立をし、後見人が立てられたのちに、この後見人と遺産分割協議をしていくことになります。
なお、後見人申立についての申立用紙などは、家庭裁判所にあり、利害関係人であれば、ご自身でも申立可能ですが、手続きが煩雑ですので、弁護士に申立の代行を依頼することもできます。
では後見人が居れば問題はないか
これは、後見人が弁護士とか他の専門職の場合は、問題ないことが多いです。
その後見人を交えて遺産分割の協議をすることになるでしょう。
しかし、後見人が近い親族の場合、その後見人が認知症の方と、相続においては利害が対立する立場であることがあります。
(この場合の利害対立とは、現実に対立していなくても、その立場から潜在的に権利が衝突する場合を含みます)
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その場合は特別代理人の選任が必要です。
特別代理人をさらに立てるくらいならば、初めから弁護士などを後見人にしておけばよいという考えもありますが、後見人はいったん成立すると簡単に外せませんので、その相続が終わっても、ずっと後見報酬を払わないといけなくなるというデメリットがあります。
また、実際に後見人として面倒をみる以上は、近しい親族の方が適している場合多いです。
そのため、手間はかかっても、後見人を親族にして、特別代理人を選任することはあり得ます。
最後に
実は後見人が必要な場面で、後見人をつけずに、都合のよいように処理してしまおうという方は時折おられます。
しかし、後見人は判断力がないわけですから、このお金を取り込んで、自己の自由に処理することは、横領になる可能性もある大変問題のある行為です。
最終的にどのような処理をするにしても、事前に弁護士に依頼されて対応したほうが良いでしょう。
普段は資産を意識していなくても、相続時は不動産評価なども入れると、数千万や数億となることも珍しくありません。
金額が大きいからというだけで言うわけではありませんが、慎重な対応を心がけるほうが良いと思われます。