枕営業は不貞でないとの裁判例

法律(離婚)

枕営業は不貞でないとの裁判例

(東京地判平成26年4月14日判タ1411号312頁)。

特殊な裁判例で、ネットなどでも様々な意見がのせられています。

私の下にもフジテレビの「ノンストップ」から見解を聞かせてくださいとメールが着たので、送っておきました。

番組で利用されたかどうかは知りませんが、せっかく、書いたので、転載します。

あくまで、フジテレビの「ノンストップ」よりメールが着て、返事した5月30日の時点での私見です。

また、一部分かりやすいように、修正したものです。


気になる点 概要

1 夫側はやはり違法(客側)

まず、この裁判例の下でも、不貞した配偶者のある側(本件では、クラブの客の男性側)については違法な不貞になる可能性が高いでしょう。

あくまで、独身で不貞の相手側になった側(クラブのママ)についての裁判例であることに注意が必要です。

2 被害者の視点の欠落

本件裁判例は、総括的に見て、加害者側の視点からの判決で、被害者である妻からの考察に乏しいと思われます。

本裁判例は特殊な例で、常に成立する確立した裁判例とは言えないかと思われます。

3 「ソープランドに勤務する女性のような売春婦」の性行為について

まず前提として、本件裁判例が正しいというには「ソープランドに勤務する女性のような売春婦」については不貞が成立しない必要があります。

理由付けが不明

しかし、この裁判例で、売春婦が不貞にならないのは「商売」だから「婚姻生活を破壊しない」というもので、商売だとなぜ違法でないのか、なぜ婚姻生活を破壊しないのか不明で、根拠として不明瞭です。

最高裁昭和54.3.30民集33巻2号303頁

「両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかに関わらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである」

としております。

婚姻している以上は、不貞行為は違法で、慰謝料が発生するというものですね。

上記最高裁の判例を踏まえたうえで、私の個人的な見解ですが、

「お金が欲しいため(商売)に、他人の家庭を破壊すると知りながら(裁判例によれば破壊しないらしいですが)、性行為を積極的に働きかける行為が、加害者にとって仕事と言うだけで違法な侵害にはならない」(上記、裁判例でホステスのママが不貞にならないとされた理由)

との認識は、理解しがたいです。(金のためなのだから、なおさら悪質とも思えます。)

免責は理解できる

もっとも、売春婦が、相手の家庭の破壊などの意識を全く持たず、店舗に来る多数の客の一人として機械的に対応したような場合に、その売春婦について何らかの免責を検討する必要がある可能性までは、全く否定すべきとまでは言いません。

ただ、そうであるならば、故意・過失だとか、その他の法律構成からの免責を検討すべきであり、本裁判例のいう「法的保護に値する利益に対する侵害行為」で無いとか、「婚姻共同生活の平和を害するものではない」などとは言い過ぎに思われます。

 

4「ソープランドに勤務する女性のような売春婦」とクラブのママについて

以上は裁判例でいう売春婦は不貞でないという点についての見解ですが、裁判例は、それとクラブのママは同じようなものとしております。

しかし、さらにそれとクラブのママが同一視できるでしょうか。

本件裁判例では、枕営業と売春婦の性欲処理と同列に扱っていますが、

業務時間中に一回ごとにお金を貰って相手の「既婚未婚を問わず不特定多数人の」性欲処理を「機械的にする」行為と、クラブのママが業務時間外に「素性について認識がある特定のお客」と「自由意思で」性行為するものは同列に扱えない

と思われます。

この点、本件裁判例は、その点の原告の指摘を、「出会い系サイトを用いた売春」でも特定の相手と自由意思での行為なので、同じとします。

が、そもそも出会い系サイトで知り合っての売春とソープランドでの売春とクラブのママと客の性行為が、なぜ同列、同程度のものと評価できるのかの理由が明確ではありません。

きっちりと理由があるならば、検討の余地もあるのかもしれませんが、そもそも判決文には、この3者を同視した理由付けがありません。

まとめ

以上、本裁判例の理由付は

①「売春婦は不貞で無い→婚姻関係を破壊しないから→なぜなら商売だから」

②「売春婦=出会い系サイトで売春する人」→「出会い系サイトでの売春する人=クラブのママ」

という流れです。

そして裁判例の結論は「(クラブのママ=売春婦)→商売だから不貞で無い」と言う流れと思われます。

結論が正当かどうか以前に、それぞれ論理的な理由がはっきりせず(判示されていません)、個人的には無理のある判断ではないかと思っております。

あさがお法律事務所