弁護士の評判、評価について
はじめに
先日、あるブログで、テレビや雑誌やインターネットで有名な人と、弁護士会内で有名な人は違うとの記載がありました。
それはそうでしょう。それぞれの場面で、それぞれ評価は変わるものです。
誰に聞いても称賛される立派な弁護士が理想で目指すところです。
でも、どちらかを選べと言われれば、「社会一般の人に広く知ってもらいたい。ごく普通の依頼者に評価してもらいたい」、私は、そういう姿勢でやってます。
他の仕事でもそうでしょうが、基本的に内輪の評判より、世間の評価です。
弁護士の特殊性
ただ、弁護士業界では、社会の評価だけによるべきではない、少し特殊なところはあります。
①裁判では紛争に介入します。
クレーマーやトラブルメーカー
紛争は、当事者間に相当の言い分があって、やむを得ない事情で生じるものもあります。
しかし、反社会的勢力やトラブルメーカーやクレーマーが一方的に絡んで生じているものも多いです。
そこで、弁護士が介入して、紛争を解決すればどうなるでしょうか。
中には、「自分が間違えていた」と反省する人もいるでしょう。
そして、そういう人は、周囲の人の口コミやインターネットなどで、裁判所や相手や弁護士を非難します。
そして、「そうやって敗訴した人が作り上げた評判や口コミ、これがどれほど当てにならないか」言うまでもありません。
勝者と敗者
裁判は和解しない限り、勝者と敗者に分かれます。
そうすると、通常は希望が通らなかった方は、その弁護士に恨みを持ちます。
これは、クレーマーやトラブルメーカーに限らず意外に、ごく普通の一般の人でもあります。
こればかりは、弁護士の力ではどうしようもない時もあります。
自分が負けたことを「不当」ということもあれば、さすがにそれでは周りからも白い目で見られると考えて、関係ないトラブルをでっちあげて弁護士に絡むこともあります。
(ごく一部ではあるのですが、そういう人に限って、声が大きかったりします)
②権力を敵に廻すこともある
他の業界ならば、普通は「内輪で有名なだけでは仕様がない」ということになるのでしょうが、弁護士業の場合は、権力者やその時点での社会全体を敵にまわして争って、後日、それが正当と評価されるということもあります。
冤罪事件や公害事件などは、この典型でしょう。
そういう事例では、一般にその時点での世間の評価より、内輪の評価の方が正しかったりします。
そういう意味で、単純に社会の多数が評価するから正しいとも言えない法曹業界の特殊性があります。
③専門家であること
専門性
さらには、専門職ですので、その分野の専門家でないと評価が正しくできないという面もあります。
実際に、様々な局面から証拠を全て確認すれば、
しかし、判決文を確認せずに、ニュースの見出しだけで作られた評判を盲信すると、やはり誤った噂に流されてしまします。
④イメージからの評価
これは各職業ごとにあるでしょうが、弁護士という仕事である以上、こういう人だろうというイメージからの評価です。
私も、実際に話したこともない人メールやこのブログを読んだこともない人に、イメージや評価、噂が作り出されていることは、しばしばあります。
このイメージが悪いものであれば嫌ではありますが、私は話したこともない以上、このイメージを直しようがありません。
実体よりも良すぎるイメージの場合は、照れ臭いので、やはり直したくありますが、これもどうしようもありません。
しかし、やはり基本は社会の評価
とは言っても、テレビや雑誌、インターネットや口コミなど、社会一般の評価を無視して行動してもよいというのは言い過ぎでしょう。
そういう媒体や社会一般での評価は、やはり大切なものだと思います。
やはり、内輪の評価は二次的であると思います。
上記で内輪の評価を無視できない理由をあげましたが、それぞれ具体的な場面を想像すれば、特殊な事情がある場合に限られることが推測できるかと思います。
メインは社会評価を中心に検討すべきものでしょう。
法科大学院制度、裁判員裁判制度と言うものがあります。
これらは結局は、弁護士が内輪の会合に引き籠って、社会との接点、社会との評価や評判を考えなかったがゆえに、
「弁護士は専門馬鹿ばかり→法科大学院で多様な人材を」
「刑事裁判での専門家たちの内輪で決めた量刑はどうも世間的に見ておかしい→裁判員裁判で市民の良識を」
との考えで生まれたものです。
このように社会から批判されて、制度が変更されたことは、法曹としては良く反省すべきことと考えております。
私は法曹界に呼びかけるほどたいそうな人物ではありませんが、一弁護士として、自分は社会の評価、マスコミやネットの評判も意識して、一般の人の視点を忘れずに活動しようと考えております。
弁護士は、様々な局面や媒体で、評価される仕事をしていかなければなりません。
少なくとも私はそう考えております。