内容証明とか公正証書について
内容証明や公正証書について、一般の方も用語はよくご存じです。
そして、それが、法律上の何かについてのものということくらいは漠然とお判りいただいているようです。
しかし、具体的に何か、ということになりますと誤解されていたり、わかっていなかったりすることがあります。
これらについてご説明します。
内容証明
内容証明というものも郵便物の一つです。
郵便物の配達方法には、いくつかの方法があります。
郵便局や他業種的には別の分類があるかもしれませんが、弁護士的には以下のような検討をしています。
法的に見た郵便物の分類
(単に意思を伝える場合で争いが無いであろう場合)
普通のハガキや封書・・・・・届いたかどうかの証明はありません。
(到達を確認したい場合で、郵便受に入れてほしい場合(相手が受け取らない場合))
特定記録郵便・・・・インターネットで相手のポストに配達したことを確認できます。
(到達を確認したい場合で、手渡しにしてほしい場合)
書留・・・・発送日と到達日、経由郵便局が確認できます。
簡易書留・・・・発送日と到達日が確認できます。
(送った文章の内容を証明してほしい場合)
内容証明郵便・・・・文章の「内容」(何が書いてあるか)が郵便局に保管、証明されます。
(到達日の証明書面が欲しい時)
配達証明・・・・相手に書面が届いたことを証明する葉書が差出人にくる。
以上のように、各郵便は、どこまで証明してもらいたいかで、どういう方法で出すかを決めております。
証明する内容が増えれば、費用と手間は上がります。
なお、しばしば、内容証明郵便を、特別な請求のようにお考えの方がおられますが、そういう意味はありません。
ただ、特に弁護士が内容証明を出した場合、訴訟できる資格がありそういう仕事をしている人が、訴訟準備しながら最終提案として出すことが多いので、「この内容に応じなければ訴訟になりますよ」と言う趣旨を持つ場合が多いです(そうでないこともあります)。
内容証明の作成上の決まり
郵便局窓口での内容証明は、1枚520文字までと定めています。
また記載できる文字はJIS水準の文字と決まっており、特殊なマークやロゴ、表などは記載できません(こういうものを送りたいときは、同日に別便で送ったりします)。
文字は10.5ポイント以上145ポイント以下、余白も上左右:1.5㎝以上、下7cm以上と決まっております(横書きの場合)。
内容証明の期限
通常、内容証明郵便で何らかの請求をした場合、回答期限をつけますが、この期限は「1週間から2週間程度」が多いです。
相手が、検討して回答するのに必要な期限を検討して記載するのですが、この期限が極端に短い場合(2-3日)があります。
短い期限を付す理由はいろいろあります。
例えば、緊急の対応が必要な場合で相手の対応は容易である場合、印鑑を預けたままとか、身分証を置いたままで返してほしいなどの場合などがあります。
あるいは回答を元々期待しておらず、訴訟等、次の手続きをメインに考えているので、とりあえず、最低限の期間で最後のチャンスをあげようと考えている場合もあります。
そのような事情がある場合もありますが、中には、じっくり検討したり他の弁護士に相談すると都合が悪いので期限が短いということがあります。
そのような場合、焦って回答すると思うツボです。
相手には、「今、弁護士と相談中です」の一言と「○月○日までにお返事します」と短く回答して、じっくり弁護士と相談してから回答するのがよいでしょう。
内容証明への回答のコツ
内容証明郵便への回答ですが、内容証明で返すこともあります。もっとも、書留などで返すこともあり、特にどちらとも決まっておりません。
この際、いろんな事情を書きたがる方がいますが、回答文は動かしがたい証拠になります。
自分では有利なつもりの回答が、ほかの証拠との関係で、致命的になることもあります。
安易に何でも回答するのはやめた方がよいでしょう。
出来る限り、端的に必要最小限の回答を心がけるべきです。
公正証書
公正証書とは、端的に言えば文字通り「公的」に「正しい」ものと「証された」「書面」です。
契約や示談書を、この書面で作れば、裁判でも正しく成立したものと強く推認されますし、「強制執行認諾」の文言があれば、裁判せずに強制執行も可能です。
遺言が公正証書にされていれば、無効をきわめて争われにくくなるほか、裁判所での遺言検認が不要になります。
公証人役場
作成者は公証人によります。
公証人は、公証人法の規定により、判事・検事などを長く務めた法律実務の経験豊かな者の中から法務大臣が任免するもので、法律の専門家です。
全国で300か所程度ある公証人役場で業務をされております。
阪神間ですと、尼崎の塚口や大阪の梅田などに公証人役場はあります。
法律の専門家ですので、必要な内容を伝えれば、法的な言いまわしなどは考えてくれます。
ただ、依頼者のために話を細かく確認して、不明点まで調査して、書面を作り上げていくことまでは、仕事ではありませんので、特殊な条件や大きな金額になる場合は、弁護士に作成協力を依頼した方がよいかもしれません。
作成の不安だけでなく、公正証書でも示談書などは対立相手と顔を合わせないと作成できませんので、それが嫌で弁護士に依頼することもあります。ただし、離婚協議書の公正証書については、弁護士に依頼していても本人の出席が必要です。
高齢の方の遺言の公正証書作成などの場合は、公証人の出張での対応もあります。
当事務所でも、必要に応じてご依頼があれば、対応しております。
その他
公証役場には,「確定日付印」が備え付けられています。
私署証書(私人の署名又は記名押印のある文書)にこの確定日付印が押されますと,その私署証書が確定日付印の日付の日に存在したとの事実の証明になります。
また、会社設立時の定款の認証なども、この公証人が行います。