雑記2
なんとなく思いついたことを記載していたものをまとめています。
弁護士の考えとか、普段の思いをわかっていただき、弁護士を選ぶ材料にしていただければ。
注意一秒
注意一秒、怪我一生という言葉があります。
ご存知でしょうが、わずかな注意を怠れば、一生のけがをするというような意味です。
この言葉を弁護士の業務に置き換えると、注意一秒、信用一生ということになるでしょう。
弁護士の仕事は、原則として工事現場やドライバーのように身体の危険に直結する事故のある仕事ではありません。
(例外的に、交渉相手が闇金とかストーカーと言うような場合はありますが)。
しかし、わずかな注意も要求される仕事ではあります。
注意不足で怪我をするわけではありませんが、依頼者様にはご迷惑をおかけします。
また、弁護士と言う仕事は信用が第一であり、わずかの注意不足でそれを失うことがあります。
弁護士の仕事の中には、ご本人でもできるものはあります。
しかし、それでも、なぜ費用を払って弁護士に依頼するのか。
それは、弁護士に任せれば安心と言う信用があるからでしょう。
そうである以上、信用第一、1秒の注意を怠らずに、わずかの注意を怠れば一生の信用を失うという覚悟で仕事をしております。
次に頑張ろうはない
私どもの弁護士業、他の専門職でもそうですが、「次に頑張ろう」という考えでは仕事ができません。
もちろん、どの仕事の方も、初めから「次に頑張ろう、今回は失敗してもよい」とは思ってないでしょうが、それでも万が一失敗したときに、「次に頑張ろう」と思えます。
これに対して、私どもの仕事には「次」はありません。
一人一人の依頼者にとってはその裁判がすべてです。
「次は絶対にない」という前提で仕事をしなければなりません。
専門職である以上、当然負うべき責任であるとは思いますが、実際には結構大変です。
失敗を生かすのではなく、初めから失敗しないように予防線を何重にもはって対応しております。
「私どもは失敗したら次はない。」と言う気持ちで、仕事に取り組んでいます。
一つの業務に時間をかけるのも、専門能力に不安がある分野は依頼をお断りするのも、それが故です。
ご理解ください。
法律相談するうちに呼び方が変わる
弁護士への法律相談に最初に来た時、「○○さんの主張は、こういうことですね」とか「御社はこうお考えのようですね」といった話し方で私どもは対応します。
しかし、依頼を受け、だんだん話が進むにつれ、話し方が「私たちとしては、こういうことです」とか、「うちの会社は、こういう考えで行きましょう」という話し方に変わってきます。
これは、相談が進み依頼者さまと共に悩むうちに、だんだん、「○○さん」「御社」という第三者でなく、「私ども」「うちの会社」という共に協力し合って対応する立場に、依頼者と一緒に相手に主張していくんだというという気持ちに変わっていくからです。
もちろん、訴訟では、一面において、当事者から一歩引いた冷静な面は大切であると思います。
そのため「冷静に検討しよう」と考えながら、相談していると、また呼び方が「○○さん」「御社」に戻っていくこともあります。
依頼者と相談中、依頼者の仲間として、ともに当事者としてトラブルへの対応を考える時間もあれば、冷静な第三者として状況を観察する時間もあります。
このため、相談中に相談者の方の呼び方が、時々変わってしまいます。
私がサラリーマン時代、法律相談に行った際に弁護士が「わが社」「うちの会社」と口にするのを聞いて、
「この人は弁護士で、うちの会社の人間でないのに、なぜこういう言い方するのかなあ」
と思っていましたが、自分が弁護士になって、よく理由がわかりました。
人の批評は簡単なこと
弁護士と言う仕事では、裁判で相手の主張の、あらを探したり、問題点や矛盾点を指摘して、批判します。
それで気づいたことですが、
「相手がどれほどの天才で、どんなに優れた書面を出してきても、相手がどれほど問題のない行動をとっていても、それに対する批判点や問題点を探すのは易しい」
ということです。
(もちろん、裁判所に認められるかどうかは別ですが)
訴訟などの状況でも、それなりに相手を批判したり問題点を探すことは、どんな立場からでも容易であることを理解していれば、物事を冷静に見れるようになるでしょう。
どうしても自分に利害が絡めば、自分に有利な点にだけ目がいってしまいますから。
そして相手を批判ができるから、自分が有利と勘違いしたりします。
しかし、最高裁判例を学生が批判する卒論を書いたりすることがわかるように、経験豊富な天才が15人集まった書いた書面も、一学生が批判しようと思えば、あらを探して批判できるのです。
裁判の見通しを考えるのに、この点を見落としてはならないと考えております。
それと弁護士業とは離れますが、日常生活において、「人を批判、問題点を探すことは容易である」ということを頭の片隅において物事を見るようになって、人を批判することが減り、柔らかな対応ができるようになったかと思います。
弁護士の受任拒否
弁護士は受忍義務はないですし、場合によっては拒否義務があります。
利益相反のように明文上に拒否義務があるものはありますが、そうでなくても拒否すべき場合があります。
例えば、法律的にまったく成立しない主張の場合とか、本来あるはずの証拠すらなく、言っていることが真実かどうかの判断もできない場合。
法的主張をするのが弁護士の仕事で、法律を離れて他人に文句を言うのが仕事ではないので当然です。
そういう場合は断るのですが、大変困るのが、お断りの仕方。
せっかく相談に来ていただいているのに、断るわけですから、相手を傷つけないように、いろいろ言いまわしを考えます。
正直に回答するのがモットーですが、言いまわしの点で、何とか工夫しようと悩みます。
人によっては、断ったあと、些細な一言をとらえて、逆切れする人もいますが、こういう時は本当に困ります。
弁護士になったばかりのころ、先輩弁護士が、「依頼を断るのは本当に大変だ」とおっしゃっていたことを思い出します。
なお、時折勘違いされますが、私が「よく検討してみてください」とか、「どうしてもという場合は受けますが・・・」という回答をしている場合は、遠回しに断っているわけではありません。
事件の相手方に対して、相当にお怒りで、いったん落ち着いて、費用対効果を検討してもらった方が良いと考えている場合です。
短い文章を長時間かけて
弁護士が、書面のやり取りで交渉する時、訴訟で書面を出す時、ごく短い書面を提出する時があります。
しかし、短いからと言って、何も考えていないわけではありませんし、かけている時間が短いわけでもありません。
書面は短くても、その背後において多角的な調査などのうえで、あえて短く書いていることはあります。
無駄な記載は無駄に相手に無駄に証拠を与えることになり、不利な結論を招くことになります。
弁護士を付けない本人訴訟を見ていて、いちばんよく思うのは、主張に無駄が多く、不利な事項をやたらと記載しているということです。
自分では有利なつもりで書いているのでしょうが。
弁護士を使っている時との大きな差のひとつだと思います。
ごく短い文書でも、練りに練って作る。
外からは、短い文書しか見えませんし、かけた時間は分かりにくいですが、弁護士の仕事として重要なところの一つだと思います。
「簡素さこそが終着地。」とショパンも言ってます。
ショパンは好きじゃないですが(笑)。
イメージでなく事実を確認
妻は何を勘違いしているのか、ラコステを「リーズナブルなポロシャツ屋さん」と思っていたそうです。
ラコステに入って、私が服を何着かの服を迷っていると、妻は「誕生日なんだから、悩まず全部に買ったら。私のプレゼントやし」と言い出しました。
私は、妻に小声で何度か「結構高いし・・・」とか「そんなに買ってもらうわけには・・・」と伝えましたが、「リーズナブルなポロシャツ屋さん」と思っている妻は、私が「遠慮している」と思ったらしく、ぜんぜん伝わりません。
結局、妻は値札も見ずにレジに持っていき、レジで会計の金額(5桁くらい)を見て、蒼白になってました。
イメージで行動すると、こういう目にあいます。
プライベートでは笑い話で済みますが、私どもの業務では、イメージだけで動くと取り返しのつかないことになります。
正確な事実確認は大切です。1秒値札見るだけの話ですから。