依頼者の言いなり


相当の前のことなので、そろそろ書いてもいいかと思って書きますが、和解の交渉事例で「依頼者の言いなりか」と相手の弁護士に嫌味っぽく言われたことがあります。

(なお、以下はあくまで当職のスタンスを示したいだけで、その程度の嫌味を特に気にして反論したいわけではないです、念のため。)

私は、依頼者が何を言っても、虚偽主張はしません。

私は、依頼者が何を言っても、相手に脅しや侮辱になるような記載はしません。

私は、依頼者が何を言っても、それなりの根拠を示してくれなければ、対応はしません。

依頼者の方から、嘘をつくように求められたり、相手を脅すように求められたり、全くわずかな根拠もないことで相手を追及しろと言われれば、拒否し依頼を辞任します。

そういう意味では「依頼者の言いなり」に動くことはありません。

しかし、和解交渉や権利を行使するかの検討の場においては別です。

もちろん、裁判の見通しは告げます。

和解や権利行使についてのメリットとデメリット、予想される判決の幅や可能性の割合も告げます。

冷静さがないと思えば、日にちを置いての検討をしてもらいます。

判決後の事情や回収可能性なども説明します。

しかし、様々の情報を告げたうえで、「それを検討して、こうしたい」と言われれば、依頼者の権利についての話なんですから、そこは「依頼者の言いなり」に動きます。

それでも、「説得」して和解すべきという人もいますが、私はそうやって「説得」されて和解した人が、「前の弁護士に無理やり和解させられた」と泣きながら事務所に相談に来たことが何度かあります。

はっきり言います。

それは説得ではないです。それは紛争の解決ではないです。

味方であるはずの弁護士から言われて断り切れなかったり、弁護士の権威から判断に迷った依頼者の心情を利用した「やっつけ仕事」です。

あと一つ、そうやって本人の意向に深く配慮すると、「依頼者を説得できないのでは・・・」と言われることもありますが、それもありません。

私はこの人は信用できると思わないと依頼を受けないです。

依頼者にも契約の初めに「時間をおいて私と契約するかよく考えてください」と伝えて、1日以上は時間をおいてから契約してもらっています。

私と依頼者間で考え方に齟齬があると感じたときは、それを正直に話して委任契約を合意解約するかを話し合います。

ですので、依頼者とは深い信頼関係で結ばれていると思います。

感覚的にはなりますが和解の話が出たとき、7割くらいの依頼者の方からは「和解に応じるかは、先生が決めてください」と言われます。

そこまででなくても、おそらくは9割くらいの依頼者は「私が和解しましょう」といえば話を聞いてくれると思います。

しかし、ある権利を行使したりしなかったり、譲歩したり和解したりするのは、単にお金の損得や時間の損得だけでは測れないものがあります。

その人(会社)は社会的で活動しており、裁判もその人にとっては、社会における活動一つにすぎません。

その方の人生観や生き方もあります。会社なら営業方針や従業員、取引先との関係もあるでしょう。

裁判はその解決が有利でも、その解決姿勢が社会や取引先、株主に対しての会社の在り方で、マイナスに働くこともあります。

それは、弁護士が判断できるものではありませんし、そんな権限はありませんし、能力もありません。

ですので、依頼者に十分な資料、メリットデメリットをお伝えした後は、依頼者に判断していただく必要があります。

私はそういう姿勢で、仕事をしております。

ちなみにこう書いてますが、実際には訴外での交渉も入れれば、依頼の8割くらいは和解で終わります。

あさがお法律事務所